Orchestral Works #1
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「 きらきらぼし」による変奏曲、フーガと行進曲
Variations, Fuga and March based on “Ah! Vous dirais-je, Maman”
作曲:田廻弘志(たまわりひろし)
iTunes楽曲販売ページはこちら(試聴可能)
<原曲について>
「きらきらぼし」による…という日本語のタイトルにしましたが、その原曲はフランスの古いシャンソンである“Ah! Vous dirais-je, Maman” という曲で、日本語に訳すと「ねぇ、ママ、聞いて頂戴」というような意味になります。娘が母親に自分の恋について語るという内容の歌詞なのですが、一般的な女子というものは、母親と恋の話などをするものなのか、男である私にはよくわかりません。作詞者も作曲者もいずれも不詳の曲のようです。
一般に広く流布している「Twinkle twinkle little star」の歌詞は、イギリスの詩人、Jane Taylor の英語詩“The Star” を引用したもので、どうもそれは、特段、“Ah! Vous dirais-je, Maman” の旋律に当てて書かれた歌詞ということではなく、純粋な詩として書かれたもののようです。“The Star” の詩が“Ah! Vous dirais-je,Maman” の旋律にぴったりとはまるということを誰かが発見し、それが定着していった、ということなのでしょうか。
“Deck the Halls” もそうですが、本来の歌とは別に替え歌のほうが広く親しまれる旋律というのは、なにか不思議な魅力を持つものが少なくありません。「きらきらぼし」の旋律は極めて単純であるがゆえに、極めて印象的です。
<楽曲について>
この曲もまた習作とも言えるもので、変奏曲という形式の中でいろいろな音の重ね方を試したものです。10 年以上も昔に作ったものでして、発表するつもりもなく、Roland 社のSC-88 Pro という極めて古いハードウェアの音源で作って
いた気がします。記憶が曖昧なのですけれど、そのときは、オーケストラ編成とはいえ1管編成というお手軽な編成で作っていたような気もします。
それからしばらくののち、なんらかの形でこの曲を発表したいと思い、ソフトウェア音源を使って2管編成に書き改めたものを作っています。しかし、仕上げにまでは至らず、再びお蔵入りとなりました。当時所持していた音源の表現力では、どうにもうまく表現できない箇所があり、発表していいのかどうなのか迷っていたんだと思います。
明らかに嘘の音色であれば、多少、表現がおかしくとも、そんなもんだろうと気にしないという面があります。けれど、それなりにリアルな音で再生してしまうと、実際のオーケストラの響きとの違いがむしろ逆に意識されるようになり、しっくりこないのです。音源にもまた「不気味の谷」と呼ばれる現象があるのかもしれません。
そのような事情でお蔵入りとなっていた曲だったのですが、新しい音源の導入によってついに日の目を見ることになりました。