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07 魔王

詞・曲:tamachang [氷山キヨテル(Rock), Vocoder]

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歌詞


闇夜の風を切って馬を走らせ急ぐ 男は子どもをその手に抱えてる
妖しく月は光る 馬は嘶き駆ける 子どもは何かを見つけて怯えてる
「お父さん怖いよ 魔王が僕を見てる 冠かぶった尻尾の生えた魔王がいるよ!」
「誰もいない ただの霧だ 怖くはないよ」

闇夜の風が荒ぶ 木々はざわめき揺れる 子どもはその手で耳を塞いでいる
「お父さん怖いよ 魔王が僕に囁く こっちにおいでと聴こえるでしょ? 魔王の声が」
「落ち着きなさい 風に揺れる枯葉の音だ」
「ほら かわいい坊やおいで 娘が待っている 一緒に遊ぼうって
きれいな花もある 豪華な服もある 一緒にさあ歌おう 輪になって踊ろう」

「ほらそこ見てみて 魔王の娘たちがこっちにおいでと手招きして誘っているよ!」
「揺れているね 古い柳 よく見てごらん」
「ほら かわいい坊やおいで お前が愛おしい 楽しい場所行こう
苦しいこともない 悲しむこともない 待ちくたびれたぞ!」
「お父さん痛いよ 魔王が僕をつかむ 鉤爪刺さるよ もうだめ僕は逃げられないよ!」
男は恐れなして 馬に鞭打ち急ぐ 苦しむ子どもをその手に抱きしめて
闇夜の風を切って 馬を走らせ急ぐ 男はようやく館に辿りつく

その手に抱いた子どもはすでに死せり

(Johann Wolfgang von Goethe の「魔王」による )

詞について

ゲーテの詩にシューベルト(Franz Peter Schubert)が作曲した「魔王」という歌曲がありますが、そのゲーテの詩の内容をなるべくそのまま日本語の詩として置き換えています。

楽曲について

シューベルトの作曲した「魔王」がそうであるように、ゲーテの詩は1人で4役を演じる必要があります。つまり、子供の台詞、父親の台詞、魔王の台詞と、語り部の地の語りの4役です。人間の歌手がシューベルトの「魔王」を歌うときには、歌手が声色や抑揚を変え、それら4役を演じ分けます。実演するときにはそれに加え、顔の表情や手振り身振りなどの視覚的な要素も加わるかもしれません。

人間の歌唱ではそうなるのですけれど、機械がこの内容を歌うとき果たしてどうなるのか。視覚的な要素なしに音だけでどう表現するのか。それを試しているのがこの楽曲です。シューベルトの魔王もそうですけれど、音の配置のしかた、つまり、作曲そのものによって役に適切な音を配置するということはできます。子供は高い音域、父親は低い音域というふうに役ごとに音域を変えることができます。また、子供はせわしなく早口で歌い、父親は落ち着いてゆっくりと歌うというように台詞回しの速さの対比を作ることもできます。

それはそうなのですけれど、細かな声色や抑揚の対比は演奏データを作り込むことで演じ分けなければなりません。あれやこれやと工夫はしていますが、そこは機械なので限界もあります。というよりも、機械には限界はないのだけれど、データを調整する人間のほうに限界がくるのです。永遠にデータを調整し続けることはできませんから。

それと、もう1つ、機械の歌唱ならではの問題があります。ボーカロイドには声色を作る機能があることはすでに述べましたが、それゆえに、そこが問題となります。あまりに声色を変えすぎると、まったくの別人の声になってしまうのです。ゲーテの詩は、あくまで1人4役なのであって4人4役ではありません。4人4役でよいのなら4種の歌声ライブラリを使えばよいだけの話です。およそ1人の歌声であるという声の同一性を維持するには、声色の変化は限定的である必要があります。

そこまでしてこの題材に曲を当てるのはなぜか。その主眼は魔王の声の表現にあります。人ではない魔王の声。それは、人間離れした機械の声であってもおそらくよいはずです。

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