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07 大金剛輪陀羅尼

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詞・曲:tamachang [結月ゆかりV4(凛)&Vocoder]




歌詞

曩莫 悉底哩也 地尾迦喃   ナマク シチリヤ ジビキャナン
薩嚩 怛他蘖哆喃   サルバ タタギャナン
唵 尾囉爾 尾囉爾 摩賀 作訖囉   アン ビラジ ビラジ マカ シャキャラ
嚩日哩 娑哆 娑哆 娑囉底 娑囉底  バシリ サタ サタ サラテイ サラテイ
怛囉以 怛羅以 尾馱麼儞    タライ タライ ビダマニ
三畔若儞 怛囉摩底   サンバンジャニ タラマチ
悉馱儗哩曳 怛覧 娑嚩賀   シッタギレイ タラン ソワカ

詞について

「仏説大輪金剛総持陀羅尼経」などの密教経典の中に登場する陀羅尼で、真言宗でよく唱えられるという。大「輪金剛」陀羅尼が本来の名であるように思うけれど、なぜ、日本では語順が入れ替わったのか、その経緯は調べるもよくわかりませんでした。

この陀羅尼のタイトルを意訳すると「大いなる特別に硬い煩悩を打ち砕く武器の陀羅尼」のようなことになるのだろうか。題目のそれぞれの語の意味は、次のようになります。

「大悲心陀羅尼」にもある「大」はサンスクリット語「maha(マハ)」の漢訳で、日本語のニュアンスで言うと「偉大な」とか「大いなる」というような意。そのまま音訳したときは、「摩訶(マカ)」とか「マハ」と発音することが多い。

「金剛(こんごう)」は、「最も硬いもの」の意のサンスクリット語を漢訳したもので、転じて、ダイヤモンドのことを指すのが一般的であるけれど、仏教の文脈では、仏教の教えが特別に硬く、堅牢であることを示す専門用語になっている。

「輪(りん)」は、チャクラム(輪の形をした刃で投げて使う古代インドの武器)のことで、仏教の文脈では、仏教の教えが煩悩を打ち砕く武器となる、との比喩の中にそのチャクラムをとらえる。

また、陀羅尼の本文の大意は、「金剛の悟りを拓いている如来よ、その輪によって、わが煩悩を打ち砕き、取り除き給え」というような内容になっています。この陀羅尼は、雑念や邪念が生じた際の赦しを乞う為に唱えられるようです。

楽曲について

日本の伝統的な歌曲には、独特な節回しがあります。演歌の世界では「コブシを回す」などと言いますが、そのような歌い方は日本の民謡の標準的な歌い方です。そして、その節回しは、明治期に誕生した「詩吟」や「浪曲」といった音楽ジャンル、また、昭和期に大成する「演歌」へと受け継がれています。

このような日本的な「コブシ」を持った歌い方をそのままに合唱ができないかと考えるとき、ブルガリアン・チャント(ブルガリアの合唱)が少し参考になるのです。ブルガリアン・チャントは、各声部が独特な節回しを伴いながらも、声によるドローン(低音の特定の音高の音を終始鳴らしつづける音楽の修辞法)などを伴い、複雑な和声を構成します。西洋の合唱とは異なる響きを持つ、高度に発展した合唱音楽です。

この楽曲は、そのブルガリアン・チャントに霊感を得ています。音階の音列もまた、日本的な5音音階ではなく、ブルガリアや西洋、あるいはインドと同じ7音音階の中に配置しました。けれど、それではまったくのブルガリア風となってしまうから、伴奏には日本の打楽器群、それも仏教でよく使われる打楽器群を合わせました。そのことが、なにか異様な、独特の音響を構成させる要因にもなっています。

楽曲の大部分を4/4拍子の中で組み立てています。けれども、陀羅尼の文言そのものが持つ語句の繰り返しが、4/4拍子の枠からはみ出るので、かなり複雑なポリリズムを構成します。また、部分的に、陀羅尼の音韻のリズムのままに、変拍子にしてある箇所もあります。そうしたことが、この合唱に極度に高い緊張感を作り出し、馬に乗って駆け抜けるような疾走感を作り出しているような気がします。

大乗仏教は、中央アジアの騎馬民族を経て、中国に伝わっています。そのようなことを考えるとき、中央アジアの平原に響き渡る、まったく異なる音像をイメージするのです。少なくとも、チベットやインドシナ半島に現存する仏教の音は、日本のそれとはまったくかけ離れているので、もしかしたら、日本に現存する仏教の音とは異なる仏教音楽が、過去にはあったのかもしれません。

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