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10 辯才天真言

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詞:辯才天真言・宇賀神真言による
曲:tamachang [結月ゆかりV4(純・穏)]


歌詞

※ おん そらそばていえい そわか…

雲 棚引き漂い 空めぐり 雨 舞い降り沁み入り 土めぐり
沢 出で立ちせせらぎ 谷めぐり 川 大地に広がり 歌うたう
流れよ うねりたまえ しぶく泡よ 歌いたまえ
(おん うがや じゃや ぎゃらべい そわか)

木々 緑に萌え立ち 生い茂り 花 とりどり色づき 咲きほこり
鳥 湖飛び立ち 空めぐり 人 水辺に寄り添い 歌うたう
流れよ 満たしたまえ 息吹くものよ 歌いたまえ

永久(とこしえ) 巡って 溶かして 結んで 潤し(清め)たまえ

詞について

辯才天真言は「おん そらそばていえい そわか」。宇賀神(うがじん)真言は「おん うがや じゃや ぎゃらべい そわか」。その他の部分は、作曲者が加筆した部分。

辯才天

辯才天の表記は「辯」をその略字体である「弁」とし、「弁才天」として記すことが一般的です。「七福神」と呼ばれる7神のうちの1神で、七福神の中では紅一点となる唯一の女神。

なお、七福神を構成する7神は、日本固有の神が1神(恵比寿:えびす)、インド由来の神が3神、中国由来の神3が神という構成になっています。「恵比寿」も、本来は「異邦の者」のことを指し、外来の神を指す言葉でした。が、のちに、イザナギとイザナミが「国生み」で最初に産んだ「水蛭子(ひるこ:えびす)」への信仰などと習合していくという変遷を辿ります。

と考えると、七福神は、すべてが外来の神に由来すると言ってもよいものなのですが、この七福神への信仰というのは日本に固有の信仰でして、日本人がその好みに合わせて、適当に組み合わせた神々なのです。

日本人はその昔から、日本固有の神も、外来の神も、それほど区別せずに、ご利益(りやく)があるのならなんでも奉じてきたのかもしれません。現代の大阪で信仰されている「ビリケン」も、アメリカ発の新興の偶像崇拝に由来するもので、そこらへんの事情は今も昔も変わらないのかもしれません。

さて、辯才天の原型は、「saraswati(サラスヴァティー)」という名のインドの女神で、インドでは川と音楽の神とされています。そのサラスヴァティーが仏教と習合したのが辯才天で、別名を「妙音(みょうおん)天」とも言います。「妙音天」というときは、音楽の神のニュアンスが強められた呼び名のようです。インドのサラスヴァティー像は、その手にヴィーナと呼ばれるシタールの祖先にあたる弦楽器を持っています。それに対し、日本の辯才天像は、ヴィーナの代わりに中国から伝えられた琵琶(びわ)という弦楽器を持っています。いかにも音楽の神という姿です。

辯才天真言にある「そらそばていえい」は、サラスヴァティーの音訳で、サンスクリット語風にこの真言を発音すれば、「オン サラスヴァティエイ スヴァーハ」ということになります。

宇賀神

そうした辯才天が日本に伝えられると、辯才天と日本固有の神々が習合していきます。辯才天と習合した日本の神の1つに、宇賀神という神があります。宇賀神は、古事記に記されているウカノミタマ(食物の女神)に由来するとするのが一般的ですが、その姿は蛇の姿として現されます。神道には、蛇を神の遣いとする宗派もあり、その蛇神が形を変えて、宇賀神となったのかもしれません。一説に、神社にある注連縄(しめなわ)は、交尾をする雌雄の蛇を表しているとする説などもあります。

蛇の細長い姿は、「蛇行」する川の流れに重ね合わされ、川の神となります。蛇神が川の神となり、川の神である辯才天と習合した、ということのようです。

楽曲について

シンプルな構成の合唱曲を伴う歌という構想のもと、制作しています。合唱の声部は終始、辯才天と宇賀神の真言を繰り返し、その伴奏の上に、水と生命を讃える歌が歌われる。とうとうと流れる川のイメージに合わせて、和声も複雑に動くことなく、ゆるやかな変化に留める。

辯才天はインドに由来する神であるので、インドの伝統楽器である「タンプーラ」をその伴奏に加えています。タンプーラは、ドローンを専門に作り出すギター様の弦楽器で、共鳴による長い持続音を持ち、常に開放弦で演奏されます。インドの伝統音楽の「ビョーン」と響く不思議な音はたいてい、このタンプーラによって作られています。他方、日本の辯才天が手に持つという琵琶の音は、残念ながらよい音源がなかったので、その代替として、筝を配置することにしました。

日本の筝と大太鼓と巫女の鈴。そして、インドのタンプーラとガムランで使用される「ゴン(銅鑼)」。日本の音と外来の音が混ざることで、意図的に無国籍な響きになるようにしてあります。それと、人が住むところには必ずあるだろう、川のせせらぎの音を背景に敷きました。般若心経の「火」に対し、この楽曲は「水」なのです。

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